天城越えは、名曲である。石川さゆり以外の誰が歌っても心に響いてこなかった。

歌い終わった末に魅せる石川さゆりの情念の表情と姿態は、嗚呼と思わせられる。

或る日私は、天城越えが聴きたくてYouTubeを検索した。そして、弦哲也の『天城越え』に出会った。

衝撃の稲妻が走った。

超一流のギター演奏と、圧倒的な歌唱力、思わず心が唸った。

二人の歌唱にはそれぞれの魅力があり、惹きこまれる。

唯、ひとつ気づいたのは、石川さゆりは映像と音声で感動させるが、

弦哲也は音声のみで感動させる。

弦哲也の『天城越え』にオーケストラは必要ない。

心の琴線に届ける搬送波は、彼自身のギター演奏のみでよい。

鏡花水月